生命保険の転換を勧められたら終身保険の予定利率をチェック
生命保険の更新時期が近づいてくると、保険会社の担当者から転換の話を受けることがあります。
転換とは、今加入している保険を解約して新しい保険に入り直すことを言い、「下取り」や「乗り換え」と呼ばれる場合もあります。
保険会社から紹介される新しい保険は、これまでの保険よりも特約が充実しているように思える場合があります。医療保険特約は入院給付金や通院給付金を受け取りやすく工夫していますから、確かに新しい保険に転換する方が加入者にとって有利と言えそうです。
しかし、転換すると毎月支払う保険料の総額が従来の保険よりも増加することがあるので注意しなければなりません。
終身保険は定期預金と同じと考える
生命保険を転換すると有利になるかどうかを見極めるためには、終身保険の予定利率を確認しなければなりません。
終身保険は、被保険者が亡くなった時に保険金が支払われる保険です。保障は一生涯続くので、終身保険は貯蓄性のある保険です。つまり、終身保険は、銀行の定期預金と同じような性格を持っている保険と言えます。
銀行でお金を定期預金に預けた場合、3年、5年、10年と一定期間が経過しなければ引き出すことができません。でも、すぐに引き出せる普通預金と比較すると、預金利率が高く設定されていますから、余裕資金は普通預金よりも定期預金に預ける方が多くの利息を受け取れるので有利です。また、定期預金は預入期間が長くなるほど高い利率が適用されます。
生命保険の終身保険も、毎月支払う保険料を長期間保険会社に預けておき、被保険者が死亡するまでは保険金を受け取れない点で定期預金と似ています。終身保険の保障は一生涯続きますが、これは別の見方をすると被保険者が死ぬまで定期預金にお金を預け続けることと同じです。
お金を長期間預けるほど定期預金利率は高くなります。終身保険も定期預金と性格が似ているので、保険金を受け取る時には一定の利息が上乗せされて受け取ることになります。
だから、終身保険に加入する際は、予定利率が自分にとって満足できる水準かどうかを確認しなければならないのです。
新しい終身保険の予定利率が低い場合は転換しない
現在、自分が加入している終身保険の予定利率は、契約時に保険会社の担当者が試算した書類に記載されています。
もちろん転換を勧めてくる場合も、新しい終身保険の予定利率は書類にしっかり記載されています。
保険会社から転換を勧められる場合は、定期保険や医療保険の特約がこれまでよりも有利になったという説明を受けることがほとんどです。古い保険と新しい保険を比較すると、特約に関しては新しい保険の方がメリットが多く見えますし、実際に古い保険よりも加入者に有利になっていることが多いです。
ところが、予定利率に関しては新しい保険の方が不利になっていても、保険会社の担当者は積極的に予定利率が下がったことを説明しません。
日本では、古い終身保険ほど予定利率が高い傾向があります。1990年頃に加入した終身保険なら予定利率が5.5%と非常に高いです。その後、少しずつ予定利率は低下していきますが、2000年頃に加入した終身保険でも予定利率は2.0%もあります。
しかし、近年は予定利率がかなり低くなっており1%台の水準です。
仮に今100万円を10年間定期預金に預けたとします。この場合、利率が1%と2%では、受け取れる利息が123,372円も違ってきます。
1%の場合=1,104,622円
2%の場合=1,228,994円
差額=123,372円
100万円を10年間預けただけで、利率が1%と2%の場合で、こんなにも受け取れる利息が違うのですから、契約が20年、30年、40年と長期に及ぶ終身保険だと、たった1%の予定利率の差でも受け取れる保険金に大きな差が出ることは容易に想像できると思います。
ただ、終身保険の場合は、最初に受け取る保険金を100万円や200万円と決めておくので、予定利率が異なっていても、受け取れる保険金に違いはありません。
しかし、受け取る保険金は同じでも予定利率が高い方が毎月支払う保険料は少なくなります。したがって、予定利率が高い方が毎月負担する保険料を安くすることができるのです。
生命保険の更新時期に保険会社から転換を勧められたら、まずは終身保険の予定利率を確認しましょう。
もしも、転換後の予定利率が低くなる場合は、毎月負担する保険料が高くなるので、転換に応じるべきではありません。
ただし、加入中の終身保険の予定利率が1.15%、転換後の予定利率が1.10%のように予定利率に大した差がない場合は、転換しても保険料に大きな差は出ません。この場合は、特約も比較して自分が満足できる方を選択すれば良いでしょう。