賠償責任保険は他者へ損害を与えるリスクに備える保険
損害保険には、自分が何らかの損害を受けた場合にその損害額を補償してもらえる保険と自分が他人に損害を与えた場合にその損害を補償してもらえる保険があります。
前者の代表的な例は傷害保険です。一方、後者の代表的な例は賠償責任保険です。自動車保険の対人・対物保険も他者への賠償を補償するものなので、賠償責任保険の一種です。
賠償責任保険の必要性
日常生活で、他者から損害賠償請求を受けることは滅多にありません。
でも、友人の持ち物を誤って壊してしまったり、紛失してしまった場合には、その修理代や再購入代を弁償することはあります。このようなちょっとした弁償であっても、損害賠償に当てはまるので、賠償責任を負う事故は意外と身近で発生しています。
少額の弁償であればすぐに支払えますが、大型テレビを壊してしまった場合には、10万円を超える修理代がかかることもありますから、結構な支出となります。
このような場合に活躍するのが賠償責任保険です。
最近は、自転車事故が原因で高額な賠償金の支払いを命じられるケースが出てきています。過去の裁判では、自転車事故が原因で被害者が後遺障害を負い、9,000万円以上の賠償が命じられたこともあります。このような高額な賠償金を支払うことは極めて難しいですから、自転車保険などの賠償責任保険に加入しておくことが重要と言えます。
賠償責任保険には個人向けと事業者向けがある
賠償責任保険には、個人を対象とした個人賠償責任保険と事業者向けの賠償責任保険があります。
個人賠償責任保険
個人が加入する賠償責任保険は、もちろん個人賠償責任保険です。個人賠償責任保険は、家族全員が対象になるので一家に一契約あれば十分です。
他に自転車保険、スキー・スノーボード保険、ゴルファー保険など、特定の状況で他者に損害を与えた場合に補償される賠償責任保険もあります。
事業者向けの賠償責任保険
事業者は、個人と比較して賠償責任を負う危険性が高いです。
- 食品製造業者は、製造した食品が原因で食中毒が発生した場合に損害賠償をしなければなりません。
- 家電メーカーは、製造した電化製品から出火したり爆発した場合に損害賠償をしなければなりません。
- 建設業者は、工事現場で使う足場が崩れて歩行者にケガをさせた場合に損害賠償をしなければなりません。
- 自治体は、公園の遊具が壊れていて、子どもがケガをした場合に損害賠償をしなければなりません。
このような損害賠償の危険があることから事業者は、賠償責任保険に加入しておかなければなりません。そして、個人は、事業者がこれらのリスクに備えるために賠償責任保険に加入していることを知っていれば、製品の欠陥などが原因で事故が起きたりケガをした場合に賠償請求をすれば良いと判断できます。
物損害と人損害
賠償責任保険では、物損害と人損害に対して保険金が支払われます。
物損害
物損害では、修理代や壊れた物の時価を限度に保険金が支払われます。
そのため、古い製品が修理不能となった場合には、その製品の購入価額が保険金として支払われるのではなく、壊れる直前の時価が支払われます。
人損害
人損害では、以下の内容に対して保険金が支払われます。
- 治療費
ケガの治療のためにかかった費用が補償されます。 - 休業損害
事故が原因で、仕事を休み賃金が支払われなかった場合に補償されます。 - 逸失利益
事故がなければ受け取れたであろう給料や利益が補償されます。 - 慰謝料
精神的損害を受けた場合に補償されます。ただし、物損のみの場合は保険金は支払われません。 - その他
通院のための交通費やその他事故がなければ発生しなかった支出が補償されます。
もしも、第三者の行為で事故に巻き込まれケガをした場合でも、加害者が賠償責任保険に加入していなかったり、十分な財産を持っていなければ、損害賠償を受けられるかどうかわかりません。そのため、ケガをして治療を受けた場合には、「第三者行為による傷病届け」を提出して健康保険を利用しておきましょう。
また、休業損害は、会社から休業中の給料が支払われるなど、休業によって損害が発生しなかった場合には保険金は支払われません。